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Posted date:2015.07.09

【韓国の電子書籍】韓国電子出版学会キム・ギテ会長が分析する「韓国電子出版ビジネスの現状と課題」①

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7月4日に行なわれた東京国際ブックフェア2015の「韓日修好50周年シンポジウム」に参加してきました。その第2部として「日韓電子出版シンポジウム」が開かれ、韓国電子出版学会のキム・ギテ(金基泰)会長の講演がありました。テーマは「韓国電子出版ビジネスの現状と課題」。キム会長の講演を軸に、計3回にわたって韓国の電子書籍事情に迫ります。(取材・文=呉承鎬)

韓国電子書籍シンポジウム

韓国電子書籍ビジネスの現状

 

 「近年の韓国電子書籍市場は好変化の兆しが見え始めています。何よりも、電子書籍の累積ダウンロード回数がe-PubやAPP-Bookを合わせて、10万回を上回る例が増えつつあります。ベストセラーの分野でもロマンスなどのジャンル小説一色だった初期に比べると、自己啓発や人文社会ジャンルに拡大されつつあるのも目立った変化と言えるでしょう」(キム・ギテ会長、以下同)

 

  キム会長は具体的なデータを挙げています。韓国最大大手インターネット通販「YES24」によると、2014年上半期の電子書籍の分野別ベストセラーのうち、ジャンル文学が57.9%(第1位)を占めたそうです。日本の電子書籍で売れているジャンルといえば漫画ですが、韓国の電子書籍市場ではどうやら事情が違うようです。漫画コンテンツは3.5%で第7位にすぎず、文学が12.8%で第2位、人文社会ジャンルが6.2%で第3位となっています。

 

 「相互に排他的であった紙の本と電子書籍が同時発売となる例も増えています」とも強調していました。実際に、最近売れている電子書籍といえる『ジャングル万里』(著チョ・ジョンレ、原題『정글만리』)、『大統領のライティング』(著カン・ウォングク、原題『대통령의 글쓰기』)、『カン・シンジュの感情授業』(著カン・シンジュ、原題『강신주의 감정수업』)などは、紙の本でもベストセラーになっており、紙と電子が両立しているという点に出版業界が注目を集めているそうです。

 

  日本では、紙の書籍の売り上げが減り、電子書籍の売り上げが増えている現状がありますが、韓国も状況は同じです。韓国出版文化産業振興院の統計によると、一般単行本にあたる「書籍出版業」の売り上げは、2012年基準で約1兆2760億ウォン(約1360億円)と、前年比1.2%減少しています。それに比べて「電子出版業」の同年売り上げは3139億ウォン(約335億円)で額はけっして高くないものの、前年比2.5%の増加を見せています。

 

 「中小規模の電子書籍制作業の売り上げが大幅の増加を見せ、従業員100人以上の制作業者と50人以上のサービス業者が登場していることから、電子出版ビジネスが活性化していることを読み取ることができます」

 

 

韓国電子書籍市場の分析

 

 「電子書籍流通業者の売り上げ基準(2013年)、電子書籍市場は少なくとも1000億ウォン(約107億円)と推定しています。韓国の電子書籍関連業者の売り上げは、少なくても1000~1100億ウォンに上り、出版市場全体の約2~3%を占めると考えられます」

 

<韓国電子書籍市場の規模>

  • 韓国電子書籍の市場規模は少なくとも1000億ウォン(約107億円)以上と推定(2013年基準)
  • ジャンル小説(ロマンス、武侠、ファンタジーなど)が市場をリード
  • 韓国出版社による電子書籍出版の割合は、市場全体の2~3%ほど
  • 未だに電子出版の必要性や効果についての認識が乏しい出版社が多い

 

 出版社の電子書籍制作の現状についても説明がありました。2013年、出版社による自社制作が47.3%に対して、外部委託制作が52.9%と高くなっています。キム会長は「出版社による自社制作の割合は増加しつつある」と付け加えていましたが、電子書籍の制作は“外注”が多いというのが現状といえるでしょう。「未だに電子出版の必要性や効果についての認識が乏しい出版社が多い」というキム会長の指摘とも合致します。

 

 ちなみに、電子書籍を出版し、売り上げが発生している出版社の平均売上高は8160万ウォン(約870万円)で、売り上げ全体における電子書籍の割合は平均22.0%とのこと。電子書籍を販売している出版社にとっては、少なくない数字といえるでしょう。

 

 それにしても、電子書籍が出版市場全体の2~3%のシェアというのは、かなり少ない数字です。正確な数字は把握できませんが、日本の電子書籍の同売り上げ構成比率は4~5%ほどと推計されているからです。“電子書籍先進国”といえるアメリカにいたっては、10~11%。数字で比べれば一目瞭然で、韓国の電子書籍市場はまだまだ発展段階にあるといえるでしょう。

 

 次回は、韓国電子書籍市場の問題点に迫ります。

 

取材・文=呉承鎬

 

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