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Posted date:2015.07.10

【韓国の電子書籍】韓国電子出版学会キム・ギテ会長が分析する「韓国電子出版ビジネスの現状と課題」②

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7月4日に行なわれた東京国際ブックフェア2015の「韓日修好50周年シンポジウム」に参加してきました。その第2部として「日韓電子出版シンポジウム」が開かれ、韓国電子出版学会のキム・ギテ(金基泰)会長の講演がありました。テーマは「韓国電子出版ビジネスの現状と課題」。キム会長の講演を軸に、計3回にわたって韓国の電子書籍事情に迫ります。(取材・文=呉承鎬)

無題

 韓国の大手書店「YES24」のHP

韓国電子書籍市場の問題点

 

 キム・ギテ会長は今回のシンポジウムで、電子書籍市場が伸び悩んでいる問題点についても解説しています。シンポジウムに参加した感想としては、特に問題点を詳しく指摘していた印象を受けました。

 

「韓国における電子書籍市場の問題点として、読者層の不足と購買力の低迷、標準化(コンテンツのフォーマットやデバイスの互換性)の問題、電子書籍コンテンツの量的不足、コンテンツの質の問題、流通システムや価格秩序の混乱などが挙げられます」(キム会長、以下同)

 

 韓国では零細な関連業者が多いことに加え、電子書籍に対する認識不足、小規模の市場環境などの要因によって、事業進出に消極的な出版社も少なくないといいます。その結果、「コンテンツの供給不足や消費低迷を促すことになり、市場全体の成長停滞を呼ぶという悪循環」に陥ってしまう可能性があるというわけです。

 

 キム会長がまとめた韓国電子書籍市場の問題点は、以下の通りです。

 

 

<韓国電子書籍市場の成長阻害要因>

①電子書籍コンテンツの不足

  • すでに紙の本として出版されたものを電子媒体に変換したものが多数を占め、電子媒体の特性を生かしたキラーコンテンツが不足
  • 出版社が積極的に乗り出さない現状の中、流通業者を中心とした投資の拡大により、専門家による編集・校訂を経ないまま発売されることによるコンテンツの質の低下

 

②メジャーなプラットフォームの不在

  • 電子書籍関連業者が乱立する中、市場をリードする業者の不在
  • 電子書籍のフォーマットの市場標準化および商用DRM(デジタル著作権管理)などの問題が未解決のまま
  • 流通業者主導の電子書籍の制作や流通により、出版社や消費者の不満は解消されないまま

 

③消費構造および読者層の変化に迅速に対応できず

  • 電子書籍のコンテンツの多様性、便宜性、価格競争力の不足
  • 読者人口の減少ならびに、紙の本を好む成人読者層の存在

 

④専用端末機の普及率の低迷が続く

  • 大手流通業者による電子書籍リーダーが発売されているが、コンテンツ不足が続く
  • タブレットの場合は、電子書籍リーダーとしての機能よりエンターテイメントやビジネスツールとして活用される例が多いことから、電子書籍シーンにおいて中心的な役割は望めないのが現状

 

⑤大手企業は電子書籍市場からすでに撤退

  • オドドック(新世界I&C)、オーレーe-Book(KT)、サムスンブックスなど大手企業の電子書籍サービス停止

 

 

 注目したいのは、大手企業がすでに電子書籍市場から撤退しているという指摘。サムスンブックス、オドドックなどの大手企業はすでに電子書籍サービスを停止しており、その理由は「初期投資額に追いつかない利益にある」とキム会長は分析しています。また、大手企業が電子書籍サービスを停止させたことによって、消費者が電子書籍サービスの持続性への不信感を募らせ、電子書籍の利用をためらう要因になっているとのこと。不信感を持った消費者にとって、電子書籍の価格は高いと認識されてしまい、価格設定に少なくない影響を与えているようです。

 

 

 前回の記事で出た『ジャングル万里』の価格を見てみると、紙の書籍が1万3500ウォン(約1440円)で、電子書籍は8100ウォン(約860円)となっています。たしかに、いつサービスが停止となるかもわからないという前提に立つと、電子書籍よりも紙で買いたくなるのは当たり前の話かもしれません。

 

 

 一方で、いよいよ韓国に進出するとされているアマゾンについて、キム会長は「チャンスとリスクが共存する」と話します。

 

 

「最高レベルのサービスへの期待により、電子書籍の新需要の創出や、グローバルプラットフォームの登場による出版社などの選択権の拡大。ひいては電子書籍制作の増加につながる可能性があります。反対に、リスクとしては競争優位を占める専用端末機キンドルの登場によって、韓国産端末機の占有率は縮小するでしょうし、アマゾンのコンテンツ流通の拡大への憂慮もあります」

 

 アマゾンが韓国に進出すれば、韓国電子書籍市場の問題点のうち、①~④までは解決する可能性があると考えられます。アマゾンが一体いつ韓国に進出するか、注目したいところです。

 

 最終回となる次回は、韓国電子書籍ビジネスの「今後の課題と展望」を解説します。

 

取材・文=呉承鎬

 

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